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俺は、反射的に布団の中に潜り込むと、携帯をジャージのポケットに突っ込んだ。
感じる気配は……恐らく、母さんのものではない。
母さんなら、殺気を隠す事なく部屋に入ってくるだろうからな……。
だが、今はそれを感じない。
「……春?」
恐る恐る、といったような声。
聞き慣れた、このハッキリとした声色は――間違い無い。
アイツだ。
「……寝てるの?」
声の主は、俺の様子を窺うかのように再び声をかけた。
ぺたぺたと、床を歩く音がする。
――ベッドに近付いて来たのだろう。
俺はと言うと、何やら奇妙なwktk感を感じていた。
アイツは、普段よりも早くに俺を起こしに来た。
自惚れかもしれないが、真っ先に思い付く理由と言えば――昨日の事だ。
布団の中で丸くなった状態で、俺はアイツの次の行動を待っていた。
緊張感と、よく分からない期待感が、俺の中を駆け巡る。
これまでは、普通に眠っていた時間帯に、俺の心臓はしっかり覚醒して早鐘を打っていた。
「アタシ……春の彼女さん、なんだよね」
そいつはベッドの脇に立つと、そんな事を呟いた。
その言葉に俺がうんうんと頷いた瞬間、布団の中に手が入り込んで来た。
「春は、実感してる?」
今度は、様子を窺うようなものではなく、自然な声。
俺の手に、女の子特有の柔らかさを持つ手が重ねられた。
ウホッ……いい掌。
……彼女が居る男が言ってはいけないギャグだった。
うん……正直、反省してます。
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