翌日

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そう……目覚めと同時に、という所が何ともアレな行為。 男でなくとも、誰もが一度は考えてしまうのかもしれない……そんな、シチュエーション。 おはようのキス、である。 散々引っ張ってそんな事か、とかは言わない約束である。 まあ、そういう訳で俺は、相変わらず寝たフリを決め込んでいる。 薄目を開けて日和を見れば、幸せいっぱい、というような笑顔を爆発させていた。 ……あー、可愛いじゃないかこん畜生。 何やら、無性に頭撫でてやりたい。 そうして、どの位の時間が過ぎたのだろうか。 俺は日和の甘い匂いに包まれ、マズい事にウトウトし始めていた。 おい、しっかりしろ俺。 さっき七時二十分だったんだ、今の正確な時刻は分からんが、もう八時近いんではなかろうか。 だとすれば、今寝てしまえば完全に間違いなく絶対に遅刻だ。 耐えろ……ここで二度寝はいかんぞ。 と、意識朦朧としていた俺は、日和の体が離れていった事に気付いていなかった。 渾身の力を込めて瞼を引き上げると、うっすらと日和の顔が写った。 ――その日和の表情は、意識を手放しかけていた俺を、一瞬にして覚醒させた。 俺の腹部あたりに跨った格好で、日和は迷うような、恥じらうような……そんな表情をしていたのだ。 ……え? あれ……何これ。何か微妙にヤラシイんですが。
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