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「ねぇ、どうしたのー?」
「早く済ませましょう。……もう、すっかり真夜中じゃない」
日和と早川が、突っ立ったままの俺達を小突く。
俺と響弥は揃って呆れ顔を見合わせ、やれやれと首を振った。
響弥が小さく、「そら、子供だ」と呟く。
……ああ、かもな。
ただし、子供なのは日和だけじゃなく、俺も同じだが。
「ああ。……分かってるさ」
発した言葉に、自然と力がこもる。
俺達は、前方で静かに佇む影を──傷のおっさんを見据えた。
「おい、お前。いい加減、うちのもんから手ぇ引いてくれねぇかね?」
響弥が、先ずは啖呵を切った。
鋭い眼光がおっさんを捉え、身体からは凄まじいオーラが湧き出す。
それでもおっさんは怯まず、朗々とした態度で響弥に向き合った。
「いや見事。お前達の暴れ様、じっくり見させてもらったぞ。
敵にしとくのは勿体無い奴ばかりじゃのう」
くつくつと笑いながら、おっさんは組んでいた腕を解いた。
「そこでだがな。そこのお嬢、それからお前。ワシらの下へ来んか?
さすれば、この家は見逃すよう、ワシがオジキに掛け合ってやる」
おっさんは響弥と日和を指差し、口許には余裕の笑みを浮かべたまま言った。
……お誘いってか? ふさげやがって……。
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