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……ん?
そういえば少女は「悪霊退散!!」って言わなかった?
失礼だよね。
僕は悪霊じゃないのに。
『悪魔』なのに。
すっかり塞がった胸を確認して、少女のほうに目を向けた。
またもや目玉が飛び出るんじゃないかって思えるほど目を大きく見開いて、驚いている。
凝視しているのは傷が塞がった僕の胸。
「ばばばばばば化け物っ!?」
あ、また失礼なことを。
僕は『悪魔』だって。
「僕は化け物じゃないよ」
少しムッとしながらそう言えば、少女はまだよろめく体を慌てて起こし立ち上がり、回れ右をすると全速力で駆け出した。
そんなに全速力で走ったら……、
「きゃっ」
ドテッ。
ほら言わんこっちゃない。
少女は地面から飛び出した木の根に足を引っ掛けてしまうと、派手に顔から転けた。
顔を押さえながらヨロヨロと立ち上がると、再び少女は走りだした。
そのちっちゃな姿はすぐに生い茂る木々で見えなくなる。
「行っちゃった」
いきなり現れて、いきなり去っていった嵐のような少女。
これが僕と少女の、出会い。
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