さよなら平穏な日々

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「ドール、その子からナイフをどかして」 「ですが、ギース様にまた襲いかかるかもしれません」 「僕は大丈夫だよ。だから、離れて」 「……畏まりました」 ドールはアップルパイを切り分けたナイフを少女の首から離すと、自身も少女から離れた。 少女が不振な動きを見せたらいつでも命を奪える距離まで離れる。 僕は椅子から立ち上がると少女に近づき、しゃがみこむと目線を同じにさせた。 体はガタガタと震え、体は恐怖に支配され今にも泣き出しそう。 「怖がらなくて大丈夫だよ。とって食べないし、きみを傷つけたりしないから」 「……あ……悪魔の……言葉なんか……信じないわ!!そうやって……うまいこと言って……人間が……安心した隙に殺すんでしょ!?」 震える声で懸命に言葉を紡ぎ、怯えながらも緑の瞳で睨みつける少女。 確かに『悪魔』は残虐だけど、僕は殺したりしないのにな。 殺戮は、嫌いだ。 だから少女の言葉にチクリと胸が痛んだ。 「ん~、確かに悪魔は人間を殺すけど、僕はそんなことしないよ。血を見るの嫌いだし、平和が好きだし。だから安心して」 僕の言葉が信じられないのだろう。 疑いの眼差しが突き刺さって痛い……。
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