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「ここにはマリーゴールドは咲いてないよ」
「そっか」
無意識のうちに期待してたのだろうか。
咲いていない事実を知れば気分は暗く沈んでいった。
この花畑に咲かせていないってことはギースもマリーゴールドは嫌いなのかな。
なんだか同じ名前の自分も否定されたような気さえする。
悲しいな。
でもそれを悟られないよう顔にはださない。
無理矢理明るく振る舞おうとしようとしたとき、ギースが口を開いた。
「知ってた?マリーゴールドは神様の花なんだよ。そんな素敵な花を僕なんかが咲かせるなんていけない気がしてね。咲かせてないんだ」
一瞬、何を言っているか分からなかった。
神様の花。
素敵な花。
確かにそう聞こえたのは、気のせいなんかじゃないわよね?
自分の耳を疑いつつギースを凝視すれば穏やかな笑みを浮かべる。
「オレンジ色の髪に緑の瞳。マリーってマリーゴールドみたいだよね。
初めて会った時、神様の使いかと思った」
「……それは言い過ぎよ」
「そうかな?」
あははと笑うギース。
まったく。
平気でそんな臭いセリフを言うんだから。
聞いてるこっちが恥ずかしいわ。
でも、それが嬉しいんだから何も言えない。
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