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闇に包まれた空にはほんのり赤く輝く丸い月が浮かび、その周りに数えきれないほどの星が瞬いている。
部屋の窓際に座ってぼんやりと赤い月を見上げた。
月を見ながら思い出すのはマリーの姿。
いつも勝ち気なマリーが、泣いた。
初めて見たその姿が頭から離れない。
しかも嬉しくて泣いただなんて。
名前のことであんなに泣くなんて、何かあったのかな?
何か名前に関することで、辛いことがあったのかな?
マリーの泣く姿が儚くて心配になった。
でもマリーは素直じゃないから。
優しいから、きっと何があったかは話してくれない。
僕が心配するといけないから、マリーは何も話してくれないだろう。
強情で素直じゃなくて、優しいマリー。
「僕に頼ってもいいんだよ」
今日も天気がよくて暖かい。
暖かな日差しが降り注ぐなか、花畑に新しい種類の種を植える。
ちっちゃなちっちゃな種。
そう、この種は……。
「きゃぁっ!!?」
ズサァッ。
「ん?」
悲鳴がしたほうに振り向けば、地面に座り込み鼻をさするマリーの姿があった。
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