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二人の姿を呑み込んだ扉は音をたてて閉まり、霧になって霧散した。
ボロボロと零れる涙を乱暴に拭いて、ゴウルに向き直る。
「連れて行って」
次はギースに会いに行く番だ。
「行こうか」
ゴウルは妖しく笑むと、しゅるしゅると音をたてて屋敷の扉に蛇の胴体をうねり進む。
その後について行こうとすれば、誰かに腕を掴まれた。
「小娘、ファイト!!」
振り向いた先にあったのは、鼻を膨らませた山羊面。
いつもなら山羊の顔面にグーパンチでもおみまいしたいところだけど、私を応援してくれてるみたいだから、拳を突き出してゴゴの拳にコツンとぶつけた。
「行ってくるわ」
ゴゴに見送られながら、再び障気が漂う暗い魔界に飛び出した。
「あそこにいるよ」
そう言ってゴウルの指差す先には一軒の小さな家。
赤い屋根に白い壁。
ゴウルの屋敷同様魔界に不釣り合いな可愛らしい家に、さわりと心が騒いだ。
家の可愛らしさが、家の主は女性だと表しているようで。
「なにか気づいちゃったかい?」
ゴウルが楽しむように声を弾ませるけど、それに答えないで真っ直ぐと家を見ていた。
ギースに会える喜びと、家に対する不安が、心をざわつかせる。
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