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「マリー、大丈夫かい?」
「え?大丈夫だけど?」
赤いテーブルクロスがかけられたテーブルに手をつきながらゴウルに顔を向ければ、ゴウルが心配そうに私を見ている。
この人が心配するなんて珍しいわね。
……といってもこの人に会ってからまだ数時間しか経ってないのだけれど。
蛇神と言われる魔王なのに、この人もギースと同じで優しいのかもね。
「この先、何を見ても平気かい?」
意味深な言葉にきょとんとした。
この先、何があるの?
リーアンの言葉といい、ゴウルの言葉といい、妙にひっかかりながら近くのくすんだ赤いドアの前に立った。
ここに誰かいるのかしら、と思ってノックしようと手を構えた時……
「……き」
微かに声がした。
「ギース……」
耳を近づければ確かに聞こえる声。
猫なで声の甘えた声は私が会いたい人の名前を呼んで、心臓が大きく脈を打った。
甘えた声は間違いなく女の声。
嫌な予感が確実のものになって、指先が震えた。
「ギース……好き」
え?
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