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「愛してよぉ」
嫌……。
聞きたくない。
「……が……愛してる……は……ない」
聞きたくない。
聞きたくない。
ドアの向こうから聞こえてくるふたつの声を聞きたくなくて、でも手に力がはいらなくて、耳を塞ぐこともできない。
座り込み、駄々をこねるように頭を横に振るしかできなかった。
「大丈夫じゃないようだねえ」
ゴウルの声が頭上から降ってきても反応さえ示してあげれない。
それ程まで今の私には余裕がなくて、涙を零しながら頭を振り続けた。
しゅるしゅると音をたてる鱗に覆われた白が、視界の隅にはいった。
「誰!?誰かいるのぉ!?」
私達がいるのを気づいたようで、小さな足音がすぐそこで聞こえた。
かと思うとドアがあけられる。
「あれあれ?ゴウル?……と、誰?」
驚きと疑問に満ちた可愛らしい声が聞こえて、どんな子か見たいのに……けれど見るのが怖くて、顔を上げることができない。
顔をあげればそこにいるのはきっと可愛らしい子。
素直に「好き」と言える可愛い子がいるに違いない。
私もその言葉を言いに来た筈だったのに……もう無理だった。
ギースは、素敵な子を見つけたんだ。
「なんでここに?」
だから私がいることに、震えた声をだしているんだ。
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