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マリーは返事を返してくれず、ただ俯いていて。
次から次に零れ落ちる雫が床に落ちていく。
雫が落ちる度に、胸がジクジクと痛んだ。
その小さく儚い体を抱き締めたいのに、マリーを泣かしているのはきっと僕だから、その資格がなくてただ見ているだけしかできない。
『連れてくるなと言ったろ』
何故マリーを連れてきたんだ?
連れて来なかったらマリーは悲しまずにすんだのに。
僕が傷つけずにすんだのに。
ゴウルの唇が緩く弧を描き、その余裕のある笑みが癪でたまらない。
『詳しい理由は聞いていなかったが、キミがそうするなら……この子はもらおうかな』
マリーを抱き上げたゴウルの挑むような言葉に、痛む心は一気にどす黒い闇に覆われた。
マリーを
マリーを貴様なんかにやらねえ!!
でも……でも……
吠える前にマリーがゴウルの肩に額をつけるのを見て、縋るようなその姿を見て、声にならなかった。
マリーが今頼っているのは
甘えているのは
僕じゃない。
僕は、マリーを傷つけただけ。
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