‐Schwartz glance‐

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広大な大西洋の中――爆音と恐るべき高さを誇る水柱が乱立する最中、『それ』は些かの動揺すら映さない緋色の複眼型カメラアイを、狩り尽くすべき獲物へと向けていた。 【VOB(ヴァンガード・オーバード・ブースト)、使用限界まで残り三十秒。 既に目標まで到達した僚機の反応を確認。各個目標の破壊活動に入りました】 脳裏に響く囁き――まだ若さと青さの残る女性の声音=通信は、遥か三km先の戦況――ECMを筆頭とする電波障害の嵐の中――を、端的ながらも明確に伝達した。 砲撃/敵艦隊部隊のAF『ギガベース』の砲台から、巨大な弾丸が放たれる。 命中精度ではBFFの老兵『スピリット・オブ・マザーウィル』を凌ぐそれは、狙い違わず『それがいた筈の空間』を貪り喰らうかの如くに通過し、彼方で巨大な水柱となった。 さらなる砲撃――配備された四機のギガベースからの波状砲撃/あらゆる逃げ場を想定した狙撃/直撃でなくとも、衝撃の挟撃(サンドイッチ)による圧力で無事では済まない――確信に満ちた笑みで口が歪むギガベース隊艦長の元へ、通信士の焦燥に満ちた声が飛び込んできた。 「駄目です、目標健在!! 目標から熱源反応を確認!何らかの反撃が――」
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