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林田はスキンヘッドから離れて少年の方へゆっくりと近づいた。
少年はまだ林田に気づいていない。
林田さん、こんにちは。と、スコッチウィスキーが二本で一万円でございます。と拡声器で怒鳴っていた男が林田に声を掛けた。
男はスキンヘッドとおなじビニールジャンバーを着ていた。
何か飲みてぇんだよ。
と林田が言うと、拡声器をウィスキー瓶の棚の上に置いて、直立不動の姿勢をとり、林田さん飲み物は何がよろしいですか。と聞いた。
何でも良いんだよ。ココアでも何でもいいよ、二杯な。
林田はそう答えた。
あの少年と一緒にココアを飲もうと思った。何故かあの少年はココアが好物のような気がしたのだ。
ココアですね。
と店員の男が店を出ながら聞いた。
てめぇ聞こえねぇのか、俺は何でもいいと言ってるんだよ。
林田は顔を歪めながら怒鳴った。
何でも良いんだよ、ココアでも何でもいいって言ってるだろうが。温かい飲み物なら何でも良いんだよ、ココアでも何でも。
林田が不愉快そうな顔をすると、店員の男は酷く怯えた。
そして人混みを掻き分けながらどこかへ走っていって、息を弾ませながら戻り、ココアの入った紙コップを二つ渡した。
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