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「ブーメラン」
そうか、と林田は言ったが、ブーメランが何なのか知らなかった。
少年は路地を抜けて雑木林のほうに歩き出した。
林田もその後に続いた。
雑木林のほうに続く路地の南側は空き地になっていて、ゴミ捨て場になっていた。生ゴミが捨てられているドラム缶にカラスが留まっている。
ゴミはNPOに雇われたホームレスが回収する事になっているが、冬場なので、ほったらかしになっている。
その奧には鉄条網の柵で区切られ、その向こうに住宅地がある。
雑木林の手前で少年は立ち止まった。バックパックを下ろし、中からL字型にカーブした薄く細長い銀色の金属板を取り出した。
グリップには細い糸が巻かれ、内側のブレードはまるで刃物のように研磨されていた。
少年は何度も手の中でグリップを確かめ、遠くを見て、離れた場所にある生ゴミのドラム缶を林田に示した。
何だ、ブーメランって投げるもんなのか、林田がそう思った瞬間、ヒュンという風を切る音がして、それまで少年の手にあったモノが一気に低く舞い上がった。
途中から加速したのだろうか。速すぎて目で追えない。
ときおり日差しを受けてブレードが光る。
草地の緑の中を恐ろしい速さで飛行しながら点滅しているようにに見えた。
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