prologue2

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衛兵が内線電話でチャン・ジンミョンの来訪を告げたとき、パク・ヨンスは仕事部屋の机のうえのラップトップコンピューターを急いでオフにした。 日本の内閣府のホームページを調べていたが、当然総政治局の許可を得ての作業だった。 パク・ヨンスはほとんどのあらゆるサイトへのアクセスが許されている。 だが総政治局の人間が全員味方であるわけがない。 最近特に総政治局内に置ける言動は注意を要する物になっている。 この3年ほどのアメリカ民主党の懐柔制作による朝米接近によって、総政治局内における力関係が変化した。 アメリカ合衆国との利害が微妙に変化し、改革派が台頭し、保守強硬派の何人かが失脚した。 また性急な改革論者、自由化支持者も粛清の対象になった。 将軍同志が政権を譲るのではないかという噂が何度も飛び交ったが、強硬派の将軍たちに政権を任せられる訳もなく、カリスマ性のある改革派指導者も居なかった。何よりもアメリカや中国が、政変による混乱を望まなかった。 改革派が実権を握るにせよ、保守強硬派が巻き返すにせよ、将軍同志に代わる集団指導体制を確立するには程遠い状況だった。 親愛なる将軍同志は新聞やテレビを通じて、いまだ雪解けは遠い、と二度も説明した。3月のキノコには毒があるというたとえも使われた。
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