prologue2

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時期尚早な言動は害毒だということだ。 総政治局の中にも、この数年の国際状況の変化から、今やアメリカは敵にあらず、国敵は日本のみ、などと戯言を吐く者もいたが、それはまさに危険な暴言だと、パク・ヨンスは自分への戒めを忘れなかった。 改革派にせよ、保守強硬派にせよ、同調するのは常に危険を伴うのだ。互いの秘書官も通さずに、しかもこんな時間に急にチャン・ジンミョンが訪ねてきたのは、改革派でも強硬派でもない中道の人間の中から生贄の山羊を探そうという魂胆かもしれなかった。 パク・ヨンスは仕事や言動の中に不用意な朝米接近の芽を見つけようという魂胆かもしれなかった。 「パク同志。こんな時間に急に訪ねて、まず非礼を詫びだい。」 相変わらず額の汗を拭き続けながら、チャン・ジンミョンは言って、腕時計を見た。 「いやいや、かまわないよ。君も知っている通り、私はこの齢になっても1人だ。冬の蝶は来世の親の使いだと思え、だよ」 警戒心からのお世話とはいえ、太って醜い50男を蝶にたとえた事で、パク・ヨンスは軽い自己嫌悪を覚えた。 「そう言ってもらえるとありがたい。何にせよ、持つべき物は同窓の友だよ。」 「ところでパク同志、同志はいつもこんな時間まで仕事を続けているのだろうか。聞いた所によると、目が弱っているとの事だったが。」
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