prologue2

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結婚もしないし、学生気分がぬけない万年青年だと、からかっているのだろうか。それとも電力不足がまだ解決していない国家窮乏の折、この時間までコンピューターを扱っているのはいかがなものかと暗に非難しているのだろうか。 チャン・ジンミョンは平壌生まれだが、パク・ヨンスは北水白(プクスペク)山の麓の小さな村の出身だった。 小学校の頃から睡眠時間は4時間以上取ったことがなく、勉強に勉強を重ねてきた。 結婚しなかったのは、大学時代に好きだった同級生のリ・スンシュクが結核で死んだからだ。 「独り者だからといって、私は、仕事だけが生きがいという訳ではないよ」 パク・ヨンスはそう言って笑顔を作ってみせた。 ドアがノックされて衛兵がお茶を運んできた。 パク・ヨンスの机のうえは乱雑に散らかっていたので、衛兵は湯飲みをどこに置いていいかわからず、困った顔で突っ立っている。 だが目は宙を仰いだままだ。 部屋の中や来客の顔やコンピューターを見てはいけないと厳命されているからだ。 パク・ヨンスは書類を片付けて、湯飲みを置く場所を作ってやった。 まるで壁に映った影のように、一言も発する事もなく、衛兵は湯飲みを置くと部屋を出て行った。
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