2人が本棚に入れています
本棚に追加
この物語の始まるのは福岡市内のとある公園。
そこは大量の簡易テントやホームレス達で埋め尽くされていた。
その中の一つのテント。
そこの住人が人知れず目を覚ました。
この男の名は林田。単にそう呼ばれているだけであって本名はわからない。
…ビニールシートの向こうがぼんやりと明るい。
不透明な青のビニールシートの壁には窓が無いので、外の様子はわからない。
外からはたくさんの人の話し声が聴こえて騒がしい。
もっともこの場所は常に騒がしいのだが。
部屋の隅にある石油缶の中の薪がくすぶっている。
そのせいか、喉と目が痛む。
確かNPOが寝る前に火を消せと通達していたがすっかり忘れていた。
何でも何人ものホームレスが一酸化中毒で亡くなってしまったかららしい。
林田はゆっくりとテントから出た。
今から昼の配給まではまだ時間がある。
何をするでもなく、公園内を歩き回る事にした。
樹々の隙間からは冬の日差しが漏れて、林田の顔に模様を作った。
この公園の西側の道沿いには高いフェンスが設置されている。
高さが6メートルもある鉄製の巨大なものだ。
市は、酔ったホームレスが道に出て、事故に逢わないように、と説明していたが、それなら、ガードレール程度で良いはずであるから、きっと地元住民から、ホームレス達を視界から遮ってくれ等と要望があったのだろう。
最初のコメントを投稿しよう!