prologue1

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この物語の始まるのは福岡市内のとある公園。 そこは大量の簡易テントやホームレス達で埋め尽くされていた。 その中の一つのテント。 そこの住人が人知れず目を覚ました。 この男の名は林田。単にそう呼ばれているだけであって本名はわからない。 …ビニールシートの向こうがぼんやりと明るい。 不透明な青のビニールシートの壁には窓が無いので、外の様子はわからない。 外からはたくさんの人の話し声が聴こえて騒がしい。 もっともこの場所は常に騒がしいのだが。 部屋の隅にある石油缶の中の薪がくすぶっている。 そのせいか、喉と目が痛む。 確かNPOが寝る前に火を消せと通達していたがすっかり忘れていた。 何でも何人ものホームレスが一酸化中毒で亡くなってしまったかららしい。 林田はゆっくりとテントから出た。 今から昼の配給まではまだ時間がある。 何をするでもなく、公園内を歩き回る事にした。 樹々の隙間からは冬の日差しが漏れて、林田の顔に模様を作った。 この公園の西側の道沿いには高いフェンスが設置されている。 高さが6メートルもある鉄製の巨大なものだ。 市は、酔ったホームレスが道に出て、事故に逢わないように、と説明していたが、それなら、ガードレール程度で良いはずであるから、きっと地元住民から、ホームレス達を視界から遮ってくれ等と要望があったのだろう。
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