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その晩パールは店であった事を総治に話して聞かせた。
勿論ファーストキスを奪われた事も含めて…
「ごめんね…ファーストキスは総治にあげるつもりだったのに…」
「パールは悪くないよ。だから謝らないで…」
総治はシュンと小さくなっているパールを必死に慰めると、目の前のカレーを美味しそうに頬張った。
「うん、やっぱパールの作るカレーは最高だよ!」
パールは料理を褒められるより、本心では今すぐ総治に抱いて欲しかった。口では無く、行動で愛を示して欲しかった。
だが総治はパールを大切に思う余り、中々一線を越えて来なかった。
それから一週間が過ぎた。
いつものようにバイトに入ると、店内の空気が微妙に違っていた。
「お早うございます!」
「あ、お早うございます、店長!」
(何だ…いつもと同じじゃん…ん?店長?)
パールは店長と言われて、ふと後ろを振り返った。だが周囲に店長の姿は見当たらない。
「あの…店長は何処ですか?もうすぐ朝のミーティングの時間ですけど?」
パールに問い掛けられた従業員は、不思議そうな顔をした。
「店長ならいるじゃないですか?」
「え?どこどこ?」
「だーかーら!僕の目の前にいるでしょ!」
「僕の目の前?」
そこにはパールしかいなかった。
「私が店長?」
「他に誰かいますか?てんっ!ちょー」
「えぇー!何故私が店長なの!」
「(リアクション遅っ!)さぁ…本部の指示ですから僕らは理由が分かりません」
「じゃあ…本物の店長…(本物は私か)…前の店長は何処ですか?」
「本部へ御栄転らしいですよ?」
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