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「北村さんですか?」
向こうがいきなりキスしてきたからといって、有無を言わせずビンタを喰らわせたのは、流石に悪かったと反省していた。
「今度会ったら謝ろ…」
一方の総治は、日々コンビニのバイトに明け暮れていた。
「いらっしゃいませ!」
いつものように入店した客に挨拶した総治の顔が、何故か強張っていった。
「久しぶりじゃん、総治!此処でバイトしてたんだ」
それは、総治と同い年位の派手な格好をした女だった。
総治は女に構わず棚に商品を並べていく。
「出て来たんだったら教えてくれてもいいんじゃない?」
「俺仕事中だから…」
総治は小声で呟くと、レジに走って行った。
「有難うございました!またお願いします!」
「今何処住んでんの?」
「何の用だよ?仕事中だって言っただろ?」
「冷たいなぁ…それが恋人に言う台詞?」
「もぅ別れただろ俺達…用事が無いなら本当に帰ってくれよ」
「総ちゃんが捕まっちゃったから、なし崩しになっただけでしょ?ハッキリ別れた訳じゃないもん!」
「その話しなら今度またゆっくりしよう…な?だから今日は帰れよ」
「分かった…今日は帰ってあげる。でも大事な話しがあるのよね…」
「何だよ…大事な話しって?」
「出来ちゃったみたいなの…これ…」
女はそういうと、お腹をゆっくり摩った。
「マジ…か?」
「私の目を見てよ」
その目は真剣そのものだった。
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