120人が本棚に入れています
本棚に追加
ー西暦2021年2月6日ー
居候していた諸星家が引っ越す事になり、パールは恋人である柳沢 総治と飼い猫のライムと共に家を出た。
新しい住居は、築10年以上経過した安アパートだった。ペットと同居可能で家賃が払えそうな場所は此処しか無かった。
しかし住居は問題では無かった。パールにとっては総治が隣にいる事が何より大切だったからだ。
「俺、今はフリーターだけど、必ずちゃんとした会社に勤めるから」
「無理しないでいいよ…私も働くから」
二人を待つ世の中の現実は厳しかった。主任として働いていた凜には毎月の月給に加えて各種手当、半年に一度のボーナスが支給されていた。これだけの収入があったからこそ妻であるイチゴを養っていけたのだ。
だがバイトで働く総治には凜の半分の収入も無い。格安の家賃で社宅を貸与してくれる訳でもない。必然的に連れ添うパールも働らいて収入を得ていかなければならない。
幸いパールには、イチゴ直伝の料理テクがあった。この不況下、手に職を持っているのは強い味方になる。
だが総治には、特にこれといった特技が無い。あるのは高卒資格と原付免許だけだった。
最初の家賃一ヶ月分は凜が餞別変わりに肩代わりしてくれた。これで最悪二ヶ月は住む場所に困らない。
次の日から総治は新しいバイト探しに出て行った。
今の世の中は、バイトなら引く手数多だった。引っ越して三日目には働きに出る事が出来た。
「さぁて…今日からキチンと家計簿つけないと!」
それは今までイチゴがやっていた仕事だった。これからはパールが家計をやり繰りしなければならない。
最初のコメントを投稿しよう!