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安アパートといっても、風呂とトイレは完備されている。女性であるパールには大助かりだった。
総治は、因恥木リフォームで働いていた頃とは別人の様に真面目に働いた。
執行猶予中だというのもあるが、何とかパールに、もっといい暮らしをさせてあげたかった。
だからバイトをしつつ、正社員への就職先を必死に探し回ったが、現実は非情だった。
有効求人倍率が1に届かない今、正社員など簡単になれるものでは無かったし、ましてやこれといった資格の無い総治では尚更困難だった。
その日の夕食での出来事
「私も明日から働きに出るから、夕方になったらライムにご飯をあげてね」
「あぁ…分かった…」
「どうしたの?元気ないね?」
「何でも無いよ…風呂入ってくるわ…」
総治は力無く立ち上がると、のそのそと風呂場へ歩いて行った。
「総治どうしたのかしら?ねぇライム、どう思う?」
〔ニャァ…〕
ライムは不思議そうな顔をしている。
「あ!あれかな、もしかして!」
〔ニャオ!〕
パールは突然立ち上がり、ある場所へ向かった。
(ハァ…駄目だな…俺って…)
総治はいつまで経っても正社員の仕事が見つからない自分に対して、風呂場で一人溜息をついていた。
〓コンコン〓
その時、風呂場のドアをパールがノックした。
「総治…私も入っていい?」
「いいわけないだろっ!俺が入ってんのに!」
「いいじゃん…背中流してあげるよ」
「いいって!恥ずかしいから」
「大丈夫だよ、ちゃんと着てるし」
「(ちえっ…着てるのか)あ、いや、駄目だ!」
「駄目なの…(うーん…凜の元気が無い時は、お姉ちゃんいつもこうやってたんだけど…)」
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