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「あの?変ですかね…私の格好?」
「あ…いや…変じゃ無いけど…(しかしこれは…)」
男性客はそのまま黙ってパールを眺めていた。
「じゃあ…取り敢えずコーヒー下さい」
「畏まりました。少々お待ち下さい」
パールは恥ずかしそうに奥へ走っていった。
「店長!私もうこの格好嫌です!」
「いいじゃん、似合ってるよ」
因みにメイドスタイルをさせられたのはパールだけだった。
「あんのバカ店長、何考えてんだろうね!」
休憩時間に店長の悪口を言うのは女性従業員の楽しみの一つだった。
そしてメイドINパールの噂はあっという間に街中に広まり、その姿を一目見ようとする男性客が殺到した。
店としては売上倍増で願ったり叶ったりなのだが、現実の客単価は一人当たり約300円。つまり殆どの客はコーヒーだけ注文して帰っていった。
そんなある日の出来事だった。
その日の店内は、朝からピリピリと緊張ムードに包まれていた。あの陽気で人のいい店長も、初めてみる険しい表情だった。
午前8時ー朝のミーティング
「今日は北村グループオーナーの北村悟様が店舗視察にお見えになります。皆さん粗相の無いようにお願いします。手の空いてる方は店内チェックをお願いします」
それは何時に無く厳しい店長の言葉だった。
「あの…そんなに怖い人何ですか?北村さんて」
実質的に従業員を仕切っている三村 洋子も店長と同じく険しい表情だった。
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