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「取り敢えずその服は着替えなさい」
「分かりました」
パールは小走りに更衣室まで走って行った。
「でも何でオーナーはパールちゃんの事知ってるんでしょうね?」
「さぁ…俺が知る訳無いだろ?」
パールは普通のウェイトレスの服に着替え終わると、コーヒーを持って北村の席へ向かった。
「コーヒーをお持ちしました」
「有難う」
北村は丁度食事が一段落着いた所で、コーヒーを出すにはグッドタイミングだった。
「ご馳走様でした。とても美味しかったよ」
「有難うございます!」
北村のその笑顔は、料理に本当に満足した時の物だった。
しかしパールは、何故かコーヒーを啜る北村の側から離れようとしなかった。
「どうしたんだい?私に何か用かな?」
「あの…前のお席に座らせて頂いて宜しいでしょうか?」
北村は一瞬不思議そうな顔をしたが、直ぐに笑顔になって
「どうぞ…」
と、ニッコリ微笑んだ。
「失礼します」
パールは物おじする事無く、堂々と北村の目の前に座った。
「あいつ…何考えてんだ?」
その様子を遠くから見守る店長は針のむしろに座らさている気分だった。
二人の間には、しばしの沈黙が訪れた。パールはやっぱり止めておいた方が良かったかなと後悔していた。
「どうした?俺に聞きたい事があるのだろう?」
「あ…はい…」
「料理を作らせた事…かな?」
「それもあります…」
北村は小さく微笑むと、ゆっくり語り出した。
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