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「だって、小難しい顔してるんだもの。それに涙目よ、君?」
なんとも情けない。
いつの間にか忘れ去られる事に恐怖でも感じていたのだろうか。気が付くと僕の頬には、一筋の涙が流れていた。
「大丈夫、大丈夫」
そう言いながら嘲笑う事無く、頭を撫でている君。
その笑顔を見ていると気持ちが和らぎ、今まで感じていたであろう恐怖心が消え去っていた。
「ああ、もう大丈夫だから、頭から手を退かしてくれよ。これはちょっと恥ずかしいかな?」
君はふふっと笑うと頭を撫でる事を止め、僕の唇に軽く口づけをした。
「――っ!」
「ふふっ、ビックリした?元気の出るおまじないよ」
悪戯っ子のような笑顔で、僕の顔を覗き込む君は、夕日の照らされてとても美しかったのを今でもハッキリと覚えている。
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