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……一頃の鈴原なら……。
こんなこと言ったら容赦なく半殺し……悪ければ殺されていたかもしれない。
だけどどうしてだろう。目の前のコイツからはそんな危険性、一切感じられない。
むしろ指一本で勝てそうな気がした。
やっぱ薬って、やべーな。
―そんなことを考えていると鈴原は急にハイになった。
「じゃあぼくちん帰るね!!!
お忙しいなかすいません!
お手をわずらわしちゃって本当にごめんなはい!
もうしわけございまへん!」
敬礼のポーズを取りながらへこへこ謝りはじめた鈴原。
今さらどうしたの、なんて聞かない。
「ありあとぉ浜野くんありあとぉ浜野くん!じゃあねーじゃあねーじゃあねじゃあねじゃあねじゃあねじゃあねじゃあねじゃあねじゃあねじゃあねじゃあねじゃあねじゃあねじゃあねじゃあね」
俺にしつこい程手を振りながら走り出した鈴原。前は見ていない。
「ぶっ」
案の定、鈴原はつまずいて顔面から思いっきり転けた。遠くに飛んでいく眼鏡。
同時に鈴原の服から大量に薬の入った袋が飛び出し、辺り一面に盛大に散らばった。
「は、やっべえどうしよう」
めがねめがねと探している間にも、薬は降り積もる雪に埋もれていく。
……哀れを絵にかいたようだ。
俺はそんな鈴原を放置して家の中に入ろうとした。
「おーい浜野ぉ!ありあとぉ!ありあとぉねぇ!」
鈴原が雪の中で座りながらぶんぶん手を振っていた。
うぜえ。
俺は家に入った。
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