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てめえもう一回言ってみろ。
気づけば私はセイちゃんの前でそう叫びながら逃げ出した淀川計を追いかけていた。
全力失踪で追いかける私。
もう周りなんて見えていない。
「やめろよ」
やめろよ?
私の前に、数人の女子が立ちはだかった。
奥に、淀川計を隠して。
「お前、いい加減にしろよ。淀川さんがどんなおもいで学校来たかわかってんのかよ」
いい加減にしろよ?
どんなおもいで?
「いこう、淀川さん」
女子たちは淀川計の肩を支えるようにして歩きだした。
いい加減にしろ。
どんなおもいで。
それはこっちのセリフだ。
セイちゃんが今どんなおもいでいるのかわかってるのか?
全員で私たちのせいにするなんて、間違っている。
お前らだって、お前らだって、
悔しいおもいをどうしていいかわからずに脳が捩れそうになっている私に、淀川計は笑顔で語りかけた。
「(バーカ)」
女子たちの中で悪魔のように微笑み、口パクで言ったそれは、私の残された理性を破壊するのに十分だった。
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