2238人が本棚に入れています
本棚に追加
家族は三人と三匹。
両親とあたし。
犬が二匹、猫が一匹。
父は犬煩悩でどこに行っても娘より犬が可愛いと言っていた。
娘を可愛いと言うのは難しかっただろう。もうあたしだって23才になっていた。
でもあたしは一人っ子で甘やかされたせいか、23才の割には童顔で子どもっぽく、特に母にはべったりだった。
「パパ」
「ママ」
あたしは幼い頃からの癖で今でもそう呼んでいて、多分これからも直らない。
2008年、夏。
前から酒好きだった父が、あからさまに酒の量を増やしたのはその頃。
原因は分からない。
躁鬱状態で、躁の時にはやたらに高い絵や美術品を買って来たりしたし、鬱の時は眠れないからと睡眠薬とアルコールを一緒に取って、ひどくあたしを不安にさせた。
毎日二日酔い状態で、焦点が合わずにフラついていることなどしょっちゅうだ。
しかし、酔って誰かに迷惑をかけるような人ではなかった。
父は長男で、責任感が強い人だ。
その頃、父方の祖父はホームにおり、長年に渡るパーキンソン病ですでにほぼ寝たきりの状態だった。
会いに行っても、あたしの名前はもう分からない。
息子である父の名前も覚えているかは怪しかったが、父がそれを穏やかに受け入れているのか、悲しんでいたのか、あたしには分からなかった。
最初のコメントを投稿しよう!