2009年9月10日

1/4
前へ
/215ページ
次へ

2009年9月10日

 あたしが新しい仕事について三ヶ月が経とうとしていた。  不安ばかりが先立ったけれど、仕事は楽しかった。いい仲間に恵まれ、忙しい日々や疲労は充足感を連れて来てくれる。  そんな仕事場の電話が鳴ったのは、夜十時過ぎだっただろうか。  あたしが電話を取ると、受話器の向こうから、あたしの母の声がした。 「パパが事故に遭ったって。警察と病院から電話があって、私、今から病院行って来るから、Kもすぐ家帰って来て」 「え……事故って何」 「電車に轢かれた。人身事故。パパが死んだって警察が言うの」 「何かの間違いじゃなくて?」 「分からない。とにかく病院行って確認するから。分かったら連絡するから、家にいて」 「うん…分かった。おばあちゃんに連絡する?」 「まだ本当か分からないから、しなくていい。ハルちゃんとは連絡取って」 「うん、分かった。じゃぁ、気をつけて」  そんな会話をして、電話は切れた。  心臓はやたら早く、頭は真っ白になった。 (パパが死んだ?)  嘘に決まっている。  そう思っているのに、混乱と恐怖で涙が溢れて来た。  あたしは震える声で仕事場の人に簡単に事情を説明し、足早に駅へと向かった。
/215ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2237人が本棚に入れています
本棚に追加