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2009年9月10日
あたしが新しい仕事について三ヶ月が経とうとしていた。
不安ばかりが先立ったけれど、仕事は楽しかった。いい仲間に恵まれ、忙しい日々や疲労は充足感を連れて来てくれる。
そんな仕事場の電話が鳴ったのは、夜十時過ぎだっただろうか。
あたしが電話を取ると、受話器の向こうから、あたしの母の声がした。
「パパが事故に遭ったって。警察と病院から電話があって、私、今から病院行って来るから、Kもすぐ家帰って来て」
「え……事故って何」
「電車に轢かれた。人身事故。パパが死んだって警察が言うの」
「何かの間違いじゃなくて?」
「分からない。とにかく病院行って確認するから。分かったら連絡するから、家にいて」
「うん…分かった。おばあちゃんに連絡する?」
「まだ本当か分からないから、しなくていい。ハルちゃんとは連絡取って」
「うん、分かった。じゃぁ、気をつけて」
そんな会話をして、電話は切れた。
心臓はやたら早く、頭は真っ白になった。
(パパが死んだ?)
嘘に決まっている。
そう思っているのに、混乱と恐怖で涙が溢れて来た。
あたしは震える声で仕事場の人に簡単に事情を説明し、足早に駅へと向かった。
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