564人が本棚に入れています
本棚に追加
一日の疲れを落とし、私は髪の毛が濡れたまま自室へと戻った。
寝室のベッドには、白いローブを纏った黒髪の若い男が眠っている。
私がいない間に執事が手当てをしておいてくれたらしく、ローブを捲ると真新しい包帯が目に入った。
一先ず彼が目覚めるまでは、私の目が届く場所に置いておかなければならない。
本当は自室へ他人を入れるのは嫌だけれど、自分で蒔いた種だ。
彼が危険人物ではないと判るまでは、私が監視することにするとしよう。
私はベッドの横に椅子を寄せ、腰を下ろした。
薄暗い部屋の暗さに溶け込んでしまうような男の漆黒の髪をかきあげ、顔の全体を見る。
目を閉じているから確かなことは言えないけれど、綺麗な造りをしている。
睫毛が長くて少し憎たらしい。
年は20代前半だろう。
肌のハリが良い。
私よりも若いな。
……。
身長は180前後。
体重は……華奢な感じ。
そして微かに花の香り。
香を焚き染める身分の者なのか。
これ以上考えても埒があかない。
さて寝るか。
ベッドは彼が占領してしまっているので、私はソファーに横になった。
最初のコメントを投稿しよう!