564人が本棚に入れています
本棚に追加
翌朝、私は何かが落ちる音で目が覚めた。
ソファーから起き上がり、音がした方に目を向ける。
案の定、男がベッドから落ちていた。
しかも仰向けで。
どう落ちたら仰向けになるのか不思議でたまらない。
落ちたまま微動だにしない男に近付くと、私の気配を感じたのか、固く閉じていた瞼を開けた。
思っていた通り、黒曜石のように綺麗な瞳をしている。
「あんた、誰」
第一声がそれか。
「君を拾った者だが」
「……」
落ちた彼を見下ろし、視線を逸らさずにいると、彼はフイッと横を向いた。
「とりあえずベッドに戻れるか?」
「……」
無言とは良い度胸じゃないか。
私は有無を言わさず彼の首の下に腕を差し入れ、肩を支えながら起き上がらせた。
腹の傷が痛むのだろう、彼は眉間に皺を寄せるも何も言わない。
「このまま私に抱かれてベッドに戻るのと、自力で戻るのどっちが好みだ?」
「……自力で」
不服そうに呟き、彼はベッドに戻り私に背を向けて横になった。
今の動き方をみると、思っていたよりも傷は浅かったのかもしれない。
最初のコメントを投稿しよう!