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「で、何があった?あの森は私有地で、他者の侵入を禁じている。
わざわざそんな場所に用があったわけではないだろう」
「あんたは、まるで貴族のような話し方をするんだな」
質問には答えず、彼は自分の感想を言う。
話題をそらそうとしている?
せっかく会話が成立し始めた矢先だったので、私は彼の思惑に乗ることにした。
「私は貴族ではない。
けれど彼らと接する機会は多々ある。だから堅い言葉になってしまっているのかもしれない」
「ふーん。じゃあ何をしている人なの、リシンシさんは」
「素性の知れない者に、私の素性を話すつもりは毛頭無い」
「……」
「……」
「俺は旅人で、昨日は数人の追い剥ぎに追われた。
多勢に無勢だったから、逃げ回るうちに森に入り込んでしまったんだ。
あの森が私有地だったとは、知らなかったよ」
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