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「じゃあクロ。あなたは怪我が治るまでここで休んでいなさい。家族に連絡を取りたいなら、馬を走らせるが」
「いや、いい。俺の家族はロクな奴らじゃないからな」
「了解した。必要なものがあればこれから来る執事に言えば良い。しばらくは私のこの部屋で過ごしてもらうことになるけれど、嫌なら他に移す」
「てゆーか、俺の言ったことを本気で信じているわけ?」
私は大きくため息をついた。
彼が私に語った話はどこまでが本当なのか。嘘なんてないのか。
違和感があっても、それは私には解らないこと。
ただ、話をしてくれたことが重要だった。
少しでも心をのぞかせてくれたなら。
私は彼を受け入れる覚悟はあった。
それはあの森で決めていた。
何度も人に裏切られながらも、やっぱり人を信じてしまう私は、甘いのかもしれない。
「信じる。じゃなければ何も始まらないから」
「……ごめん。でもありがとう」
クロはそう言うと、再び窓側に身体を向け、こちらを向くことはなかった。
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