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「私がもう決めたことだ。クロは私の客人として屋敷に迎えた。異論は認めない」
「リシンシ様!」
スバルの呼ぶ声を後ろに聞きながら、私は食堂を出た。
その足でまっすぐ私室へ向かう。
スバルの反対にあうことはわかっていた。
誰だって見知らぬ男、しかも怪我を負って追われていただろう人間を、屋敷に入れるなど反対する。
でも私は、助けなくては、と思ってしまったのだ。
なんとなくクロを、遠い昔に別れた弟と重ねてしまったのかもしれない。
階段を昇りきり、私は私室のドアに手をかける。
私が決めたことが間違いじゃなかったことを祈りながら。
部屋に入り、寝室へ。
クロは大人しく寝ているだろうか。
ゆっくりと寝室を覗くと、クロはベッドの上で起き上がり、背中をクッションに預け外を眺めていた。
そして私に気づき柔らかい表情を向けた。
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