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真夜中の森を一人散策する。
晩秋なこともあり、少し肌寒いけれど歩いていれば平気だ。
日中は落ち葉の色彩を楽しむことはできるが、日が暮れてしまうとモノクロームの世界になりなんとも味気ない。
私はそれでも、この真夜中の散策を一日の終わりの日課として続けていた。
特に理由はないけれど、一人になる時間が欲しかったし、何よりも運動不足の解消にもなる。
屋敷の者たちは女性が一人で出歩くなんて、と心配していたが、自分の身ぐらい自分で守れる。
まぁ実際はこんな辺鄙な静養地に、そんな不届きな行いをするような輩が居ないだけなんだけど。
今日一日の出来事を反芻しながら、無心に近い足取りで私は先にある湖へと向かっていた。
とその時、数メートル離れた大木の根元に白い影が横切り、私は腰に携えた双剣に手を掛ける。
魔物の類いか、不逞の輩か。
何にせよ正体を確かめる必要がある。
私はともかく、他の者たちに危害を加えるようであれば、討伐しなければならない。
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