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 足音を立てないように細心の注意を払うが、落ち葉の絨毯の上ではどだい無理な話で、私は作戦を変え、一気に白い影と距離を詰めた。  白い影は大木の根元に留まっており、動く気配はない。  よくよく見てみれば、それは人の形をしていた。  しかも倒れているようだった。  私は月明かりの下、目を凝らしながらそれが何なのか見定めようとしたが、雲が月を隠してしまったためそれは叶わなかった。  仕方がないので、近づいて確かめることにする。  こんなことならランプのひとつも持ってくれば良かった。  警戒しながら近づいていくと、白い影はローブだということがわかる。  そして人間が倒れていた。  全く動く気配がない。  死んでいるのか、寝ているのか。  寝ているんだとしたら、随分な人物だ。
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