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私はその人の横で膝をつき、仰向けにさせ鼻に手を当てた。
呼吸は荒いが、どうやら生きているみたいだ。
その人物は若い男で、手傷を負っていた。
白いローブに若干血が滲んでいる。
「おい、聞こえるか」
声を掛けてみたが、反応はない。
さてどうしようか。
起きるまで声を掛け続けるべきか。
それとも担いで屋敷まで連れて行くか。
……面倒くさいから、このままここに放置するなんて手もある。
……。
「あぁもう」
私は仕方なく男を抱き起こし、木の根元に背を預ける形に座らせ、意識のない男を背負った。
思っていたより軽いけど、自分より背が高く、意識のない人間はやはり重い。
屋敷まで数百メートル。
なんとか行けるかな。
とんだ夜中の散歩になってしまった。
耳元で男の不規則な呼吸を聞きながら、私は転ばないように気を付け、遠くかすかに見える屋敷の門の外灯を見つけたとき、安堵の溜め息が出た。
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