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もう視たくない
なのに頭の中の映像は次の場面に移行しようとする
視ておかなければいけない
そんな義務感に近い誰のものか分からない意志に支配されて新たな画像に集中した
師匠の話は止まらない
『人が人を食べた…生き残る為に』
頭の中で新たな画像が始まる。
動けなくなった老婆が横たわる。老婆ではないかもしれない。生きるための力を失ったくたびれた女性
背後で誰かの声がする
『次は○○だな』
○○とはこの女性の事だろう
背後で囁いていた人物達は次に皆で食べる事になる人間の目星をつける為に集まったらしい
悲しい事にこの名前も知らない女性は背後のやり取りを聞いていた。
動かないんじゃなくて動けない。呼吸をするのが精一杯な身体を横たえて
自分の死を待ちわびる家族に背を向けながらその時を静かに待っている
死んだら食われる
残された者の命を繋ぐ糧になる
『仕方がない』
あぁ…。この人も。
恨みもツラミも泣き言さえも思わずに潔いくらいに澄み切った感情ですべてを受け入れ『仕方がない』と想ってる
孫、子のために…
生きるために…
食われる事がこの女性の愛情なんだろう。
心の未熟な私には重たすぎる
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