―シユウドウタイ―

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  「おーい!みんなぁ!変なの見つけたぞー!!」 友くんがクヌギの木の周辺で叫んだ。  何だぁ ともぉ?  何を見つけたんだ? 公園で遊んでいた仲間が一斉に友くんに向かって走り出した。 僕も走る 「見ろよ!これ!」 集まったのを確認すると友くんがみんなに向かって手を開いた。  何だ?  おっ!すげぇクワガタじゃん!    友 いいなぁ!オレにちょうだい 皆が一斉に友くんの手を覗きこみ クワガタを見て口々に羨ましがる 「もっとよく見ろよ?」 友くんの言葉に仲間の輪が縮まる と…同時に  なんだこれ?  うわぁ 気持ちわりぃ  喧嘩でハサミがなくなったのか? 形のおかしいクワガタ 僕も覗きこむ  『シユウドウタイだ』 僕はそのクワガタが何であるかを知っている。 クワガタは 右が雄の立派なハサミ 左はハサミが異様に短い 体は 右側は艶々しているのに 左側は産毛のような毛が生えている 足も 右と左では形がちがった 一つの体に【雄】と【雌】が共存した状態 それが【雌雄同体】 「これ…誰かにやるよ!」  えぇぇーっ オレいいや  気持ちわりいよ  オレもいんねぇ 友だち皆が拒否する言葉を聞いてクワガタが鬱陶しく感じた友くん。 ポン と皆の方に向かってクワガタを放る 皆は何か悪いものが飛んできたかのように  !わぁーっ! と叫んで後ろに逃げた。 僕だけ動けない  公彬(たかあきら)みたいじゃん!そのクワガタ  公彬みたいなオカマのクワガタだぞ! 皆が僕のことをからかう せっかく見つけたクワガタが異形でしかも皆が馬鹿にする。 友くんは [公彬(僕)と同じオカマ] で一気に面白くなさが頂点に達したようだ 自分が放ったクワガタまで近づくと  グシャ 思い切りクワガタを踏み潰した。
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