第一章 前編

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「んっ、眩しい」 どうやら眠ってしまっていたらしい。 西日が窓から入ってきていたようだ。 俺はベッドから降り、直ぐにカーテンを閉めた。 「ふぅ…」 毎日陥る思考の迷宮。 出口が見えずにさ迷うだけ。 本当に出口があるかどうかすら分からないが。 コンコンッ 「兄様?」 すると部屋のドアをフィーネにノックされてまた気が付いた。 別に寝ていた訳じゃないが。 また思考の迷宮に踏み居るところだったようだ。 「なに?」 とりあえずフィーネ返事だけは返しておく。 「あのね、ご飯だから来てね」 どうやらそんな時間まで寝てしまっていたらしく、急に空腹感に体が襲われた。 「今行く」 「うん」 普通こう返事をしたらドアから離れて先にリビングに行くだろう。 しかしフィーネは違う。 俺が出てくるのをずっと待っているのだ。 俺にはそれが無言の圧力に感じて直ぐに部屋を出る。 毎日こんな感じなので半ば日課の様になっていたりするのだが。
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