34454人が本棚に入れています
本棚に追加
カチャ
ドアを開けると
私服の赤いチェックのスカートの裾を小さくキュッと握り、直立していたフィーネと目があった。
その途端、にへらぁっと締まりの無い笑顔を俺に向けてきた。
仕方無く(これも日課のようなもの)フィーネの頭を二、三度触れる程度で撫で、食事に向かった。
「あら、またフィーネはお兄ちゃんに頭撫でてもらったの?」
リビングでは母さんがテーブルにオカズを列べながら何時もの笑顔で俺の後ろから着いてきていたフィーネに言った。
フィーネは自分の頭を右手で何度も触って、またにへらぁっと笑った。
「そんなの良いから、ご飯食べよ」
これも日課。
俺が止めないと何時までもこのおかしな空間が続く。
俺は椅子に座っていち早くその空間を打ち壊した。
「そうね」
母さんは直ぐに並べ終え、自分も椅子に座った。
「はい、兄様」
フィーネは俺の横の椅子に座り、オカズを皿に取り
それを俺に渡した。
これも毎日の事なので大人しく皿をうけとった。
「実はね、今日のオカズの一品はフィーネが手伝ったの。お兄ちゃん食べてみて」
フィーネは笑顔で俺を見て、どれでしょうと言わんばかりに手を広げた。
しかし、一目でわかる。
一品だけ明らかに下手だ。
皿にも盛り付けてあって一口食べてみたが本当に美味しくなかった。
普段から料理をしているわけではないので仕方がないが、
これをどうフィーネに伝えるべきかを迷ってしまう。
最初のコメントを投稿しよう!