第六章 後編

6/35
前へ
/383ページ
次へ
「…またか」 そこに広がるのは暗黒の空間 流石になれたのか、前ほど慌てはしない だってさ 『ライル様』 ほら、ヘルヴェールが来るからね 俺は振り返り背後に整然と立っていたヘルヴェールを見据えた 「…俺はあの子を救えた、よな?」 俺の第一声はこれ それが俺の今唯一の心配 ヘルヴェールは無表情のまま頷いてくれた 『ライル様が身を呈して救われました。勿論ライル様も助かります』 そう言いながら俺の頬を冷たい両手で優しく包み込んでくれた 『もう、無茶はお止め下さい。私はライル様の御命令には当然従います。しかし、それでライル様が死んでしまっては…私はどうしたらよいのですか』 それははっきりと流れた涙 俺は驚き拭ってやる事すら出来なかったが、それは見ただけでわかるような 温かそうな涙だった 優しさの篭った涙だった 俺の事を本気で想ってくれた…ヘルヴェールの想いだった 『…ライル様、お願いがございます』 紅い瞳から涙を流しながら、それでも反らす事無く俺の瞳を見詰めた 『魔王になってください。ライル様だけが全ての魔人の頂点に立つことが出来ます…古からの契約を…約束を叶えましょう。ライル様と私で』
/383ページ

最初のコメントを投稿しよう!

34454人が本棚に入れています
本棚に追加