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「…またか」
そこに広がるのは暗黒の空間
流石になれたのか、前ほど慌てはしない
だってさ
『ライル様』
ほら、ヘルヴェールが来るからね
俺は振り返り背後に整然と立っていたヘルヴェールを見据えた
「…俺はあの子を救えた、よな?」
俺の第一声はこれ
それが俺の今唯一の心配
ヘルヴェールは無表情のまま頷いてくれた
『ライル様が身を呈して救われました。勿論ライル様も助かります』
そう言いながら俺の頬を冷たい両手で優しく包み込んでくれた
『もう、無茶はお止め下さい。私はライル様の御命令には当然従います。しかし、それでライル様が死んでしまっては…私はどうしたらよいのですか』
それははっきりと流れた涙
俺は驚き拭ってやる事すら出来なかったが、それは見ただけでわかるような
温かそうな涙だった
優しさの篭った涙だった
俺の事を本気で想ってくれた…ヘルヴェールの想いだった
『…ライル様、お願いがございます』
紅い瞳から涙を流しながら、それでも反らす事無く俺の瞳を見詰めた
『魔王になってください。ライル様だけが全ての魔人の頂点に立つことが出来ます…古からの契約を…約束を叶えましょう。ライル様と私で』
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