第六章 後編

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目を覚ますとそこには、真っ白な天井が広がっていた 消毒の臭いと静寂に包まれた部屋の中、俺は右足に何かが乗っていることに気がついた 見ようと思ったのだが、胸辺りに痛みが走り頭を持ち上げる事が出来ない 足を持ち上げるのも同様に不可能だった 仕方なく、右手を軽く動かし何回か寝かされているベッドを叩く すると 「ん…」 という声と共に誰かが起き上がった 「…母さん?」 声に力が入らず、掠れた声だったが こんな静かな場所なのだ、聞こえない筈は無かった 母さんは赤くなった目をこちらに向けて俺と無言で数秒目を合わせると 「ライル!」 顔を両手で押さえて泣きはじめてしまった 母さんが泣くところなど数年間見たことの無かった俺はどうしたらいいのか解らず、ただその姿を見ていることしか出来なかった
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