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「はぁ……朝っぱらから疲れた。」
朝のお菓子騒動も落ち着くと、登校時間が迫りつつあった。
通学鞄を持ち自室を出ると二人玄関へ向かう。
「この着物、いつ着ても窮屈だな。」
不快に眉をしかめ私が通う高校のブレザーを着た燎華は襟元を引っ張った。
主である私の傍に何時でも入れるよう燎華も神風燎華と名前を偽り学校へ通っているためだ。
ちなみに私との関係は、親戚ということにしてある。
実際は違うけど。
「おい、そこの
“零”能力者。」
不快な声が聞こえた。
顔をしかめ振り向くと予想通りの人物、正確には鬼の不遜な態度を目にする。
燎華は相変わらず欠伸をかいていた。
「なんですって?」
私より頭一つ分背が低い鬼は、外見は可愛らしい女の子だ。
髪型は頭の横で二つにくくられ、巫女のような着物を着ている。
あくまでもそれは外見だけで、私のたった一人の姉が従えているこの鬼は何故か私を目の仇にする。
「聞こえなかったのか、ふん。相変わらず屑な小娘じゃ。千沙様に挨拶ぐらいしたらどうじゃ。」
「はぁ?!屑って言った!?」
「そうじゃろう?だから、そのような名もない下級鬼としか契約できぬのじゃ。それも角もない鬼とな。」
「ぐっ……。」
反論の余地もない。
ちらりと燎華を盗み見するが当の本人はどこ吹く風といった様に明後日の方向を見ている。
この…馬鹿燎華!!
当の本人がこれじゃあ、私は腹を立てようがない。
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