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PM4:00
誰もが息を飲んだ。
当然のことながら君島と今居は取材体制に入った。
4時を乗り切れさえすればここらへん一帯にまた、いつも通りの平穏が戻ってくるだろう。
きっと誰もが思っていた。
「4時を過ぎたら一応報告があるらしいですけどね」
今居はカメラを構えている。
「さあ間もなく1分が経とうとしていますが・・・」
そう言うのはテレビ局のアナウンサーだ。
「いまだ音沙汰がありません。
・・・いや、
・・・今玄関が開きました・・・おそらく室内の警備にあたっていた警官の一人でしょう」
がたいのよいその警官は記者団からのフラッシュを猛烈に浴びた。
少し目を細めたが、厳格な顔つきで大声を張り上げた。
「たった今、交通課から連絡がありましたが、周辺に怪しい車、人物ともにいないよう。
本部との連絡をとり安全と断定しました」
ホッとする声が上がると思ったが、出てきたのはため息や残念感の声だった。
きっとここにいるほぼ全員が何か別のことを期待していたらしい。
君島はこういうことを記事にしたかった。
豊かになるあまり、退屈になってしまった日本人。
人の死でさえ刺激として望んでしまう。
こういった風潮を書いてみたかった。
夕方に差し掛かってきた。直射日光が建物の関係で周辺に巨大な陰をつくる。
君島は閉じていた手帳を再び開いた。
折り目が無数ついている。過去の事件との関連性がないか調べた記載もある。
陰によって文字が読めなくなったので、屋敷の方へ目をやった。
アナウンサー、記者団は共に粘っていた。
大枠を取っていたにちがいない。
中途半端な空気が辺りに漂った。
その時、一斉にフラッシュがおこった。
「何があった?」
ぼーっとしていた君島はハッと顔をあげた。
「見て下さい!君さん」
アナウンサーは興奮している。
「今、複数の男が出てまいりました!」
複数の男というのは黒いスーツにサングラスをかけた男たちで、いかにもボディガードのようだった。
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