死！死！その先にも死。

死

手術中、自分はずっと彼女の事を考えていた。

彼女の笑顔。彼女の喋り声。彼女の食べ方。
些細な事だったが今はそれが消えそうになっているのだと思うと色々な事を悔やんだ。

冷たく話、まったく心を閉じ込めていた自分の心を温めてくれたあの人。

彼女の笑顔は特に印象的だった。

気がつくと目から大粒の涙が流れていた。
座っていた赤い椅子は涙ですこし黒くなった。

しばらくなにも言えないまま泣いていた。

すると彼女の親がやってきた。
両親は自分に一礼すると同じ椅子に座る。
自分は涙を見せないと必死に顔を隠し目をこすった。

しばらく下をみて雅の事を考えていると、手術中と書いてある赤い文字が消えた。

自分は手術室に両親より早く入った。

｢先生！雅は……雅は大丈夫なんですよね？｣
泣いていて声が出ない。
しかし自分は腹の奥から絞りこんだ。

｢先生どうなんですか？｣
両親も不安そうに言った。

｢みなさん時計……ありますか？｣

自分と両親は時計を見た。

｢９月１５日 午後８時３０分……。中島雅死去。｣

その瞬間自分は床に頭をつけて大声で泣いた。

両親は二人肩を抱きながら泣いている。

｢雅…ごめん。なにもしてやれなかった。｣
涙が床に落ちて水たまりが出来るくらい涙が止まらなかった。

雨はまだ大雨だった。

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