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周りにあるのは、黒い嵐だった。
それは湖を割り、地を穿ち、空を切り裂く、身体を命ごと薙ぎ払う黒い旋風。
避ける事は出来ない。
人の身である限り、それは死を約束するものだ。
時間がゆっくりとなっていく。
身体に染み込むように、"死"、そのものが近付いてくる。
――けれど、一瞬にして。
この身を切り裂くはずだった、何万、何億もの羽撃きは。
闇夜に迸しる紅く細い十の閃光に、逆に切り裂かれた。
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