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        『くちなし』 高野 喜久雄     荒れていた庭 片隅に 亡き父が植えたくちなし 年ごとに かおり高く 花はふえ 今年は十九の実がついた   くちなしの木に くちなしの花が咲き 実がついた ただ それだけのことなのに ふるえる ふるえるわたしのこころ   「ごらん くちなしの実を ごらん 熟しても 口をひらかぬ くちなしの実だ」 とある日の 父のことば 父の祈り   くちなしの実よ くちなしの実のように 待ちこがれつつ ひたすらに こがれ生きよ と父はいう 今も どこかで父はいう      image=48855588.jpg
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