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「ん?どうしました?」
英治があまりにも長い間ジロジロと見つめてきたため、十宮は気になって尋ねた。
「あっ!!な、なんもないっす!すんません」
「いえ」
「つ、つか!!先輩、なんであんな子供みたいな真似を・・・」
「それより英治さん」
「え、えぇ・・・・・・俺まだ話を・・・・」
「あなた気をつけた方が良いですよ?」
「へ?」
言葉を遮っていきなり英治を真剣な眼差しで見つめてきたかと思うと、十宮はジリジリと英治に迫っていった。
「な、な、なんすか?」
ただならない雰囲気に、英治は後退る。
しかしトイレがそんな広いわけもなく、すぐに英治の背中はタイルでできた冷たい壁にあたった。
それでもなお近づいてくる十宮に、英治は行き場を失う。
「あっ、あのっ、マジで、マジでなん・・・・・・いって!」
冷や汗をかいて逃げ場を探す中、英治の両手に激痛が走った。
気づけば英治の両腕は強く壁に押し付けられている。
もちろん、押さえつける相手など十宮以外にいるわけがなく、英治はポカンと口を開けた。
「へ?へ?」
英治は十宮の突然の行動に何もできないまま硬直していると、十宮が再び迫ってきた。
そして鼻と鼻がくっつく距離に到達し、十宮がそっと目を閉じると、英治はやっとこの信じがたい状況を理解する。
「え!?!?ちょ、先輩!何すんすか!!正気ですか!?ちょ、ちょっと!!!」
必至で抵抗を試みる英治だったが、その華奢な体とは裏腹に十宮の押さえつける力はかなり強かった。
完全にあなどっていた英治は、とりあえず咄嗟に高速で顔を左右に振る。
なにこれ!?どうなってんだよこれぇぇえええええええええ!?!?
マジマジマジマジ!!!!!
英治の表情がどんどん青ざめていく。
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