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「はぁはぁはぁっっ」
「ど、どうしたの英治…そんなに急がなくても、まだ始まってないよ?」
息を荒くして帰ってきた英治に対して、秋人がキョトンとしながら尋ねた。
その言葉にギクッとした英治は、明後日の方向をみながら大笑いする。
「アハハハハー!い、いや、な、なんでもねーよ!どうしたのって、おまっ、おかしいやつだなぁ!ハハハ」
秋人の背中をバンバンと叩き、笑いながら必死にごまかそうとする英治だったが、秋人は完全に疑っている目していた。
冷や汗をかく英治をじっと見つめている。
「な、なんだよ?う、疑ってんのか!?アハハハ」
秋人の鋭い視線に戸惑いながらも、ひたすら乾いた笑顔で知らないふりを続けた。
しかし
「本当に英治は驚くくらい嘘が下手」
英治の動揺っぷりはしっかりと秋人に見抜かれていたようだ。
うっ……。
きっとここで反論しても秋人は疑い続けるだろうと思った英治は、とうとう諦め項垂れる。
「ったく…やっぱり秋人にはかなわないな……はぁー」
秋人はその反応を見てすぐに勝ち誇ったような顔をすると、早く話せと言わんばかりにニコニコと英治を見つめていた。
「で?で? 何があったのかな?早く早く!」
肩を震わせ、青ざめていく英治。
あの光景を説明するにはかなりの精神的ダメージがある上に、一歩間違えれば大きな誤解を生みそうな話だ。
どうしようどうしようと考えてる内に、英治は小さく唸る。
「ん~・・・お、お前聞いて後悔しても知らねぇぞ・・・絶対俺のせいにすんなよ!!」
「なにそれ? いいから早く早く!」
「うーん・・・・・・」
「なんだよー!気になるっ!!」
「だ、だから、つまりぃ・・・その・・・」
『えー只今より、』
「あ、始まっちゃった」
丁度良いタイミングで校長の声がマイクを通して体育館中に広がると、一気に周りが静まりかえった。
英治は奇跡的なタイミングに感謝し、ほっとした様に軽くため息をつく。
だがその行動を秋人は見逃さなかったようだ。
「後で聞くからね!」
「はは・・・」
小声でそう訴えかけてきた秋人に、苦笑いを返すしかなかった。
ったく…女じゃねーんだからさ…。
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